1 雪

「雪」


10年ぶりに
この街に雪がふった

天気予報の伝えた「晴」のマークが
恥ずかしそうに笑っている

昨日まで鳴り止もうとしなかった
雑音たちも
この白く舞い降りてくる
雪にその存在をかき消されて行く

そして
僕の周りを
“無”が支配した

何一つ音のしない
この虚無感のなか
僕は不思議と君のことを思い出した

今日のように雪の降った
10年前のあの日
この雪のように白く美しいあなたは
僕の手のひらの上で溶けていく雪のように消えてしまった

白いワンピースをその身にまとい
雪の中 舞い踊り
僕に投げかけてくれた笑顔を
僕は今でもこの瞳に刻んでいる

ふと空を見上げてみる
今だ降りやもうとしない
白のキャンバスのなか
涙が結晶となって頬を流れて行った


10年という歳月を越え
彼女はぼくにまたその笑顔を投げかけた
”雪”という形にその姿を変えて・・・


<解説>
真夏に浮かび上がった詩です。自分でつくった詩の中では一番好きです。
雪がふって音が消される~の描写は雪国出身の方でないとわからないかも・・・。感想その他よろしければ掲示板によろしくです。
注・登場人物・作品共にフィクションです。


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